【認知症になった場合】
もしも親が認知症になってしまえば相続税の節税対策をとることは「一切」実行できません。
認知症を患った場合の相続や贈与のこと
1)実際にどういった内容の法的手続きがとれなくなるのか
【2つの法律行為ができなくなる】
(1)単独行為→ 一人の意志表示によって法律効果が発生する
・遺言書を書く、取り消す、変更する
・所有権放棄の意志表示
・債権放棄(債務免除)
(2)契約→ 2人以上の意志表示の合致によって成立する
・贈与・売買・養子縁組
・契約の制作・消費貸借
・使用貸借・賃貸借
・所有権移転・抵当権設定
・介護施設の入居手続き
【デットロック】財産の転移が一切できない
- 自分の口座から預金を引き出せない
- 自分の口座を解約できない
- 定期預金から普通預金に振り替えられない
- 家族に代理で預金を引き出してもらえない
【アルツハイマーの中程度】で法律行為が無効になる
初期 | ・何度も同じことを言う ・直前のことを忘れる ・物とられ妄想がある ・趣味・日課への無関心 ・作話をする |
中期 | ・見当識障害がある ・徘徊・妄想が増える ・失語がある ・日常生活に介助が必要 ・不潔行為がある |
後期 | ・家族の顔がわからない ・表情が乏しくなる ・会話が全くできない ・尿・便の失禁が日常化 ・寝たきりになる |
2)財産を渡す側が認知症になってしまった場合
(1)遺言書の作成ができない
(2)遺言書の取り消し、変更ができない
(3)金融機関での手続きができない
(4)贈与・売買ができない
★像族税の節税策がとれない
3)財産をもらう側に認知症の方がいる場合
【遺産分割協議】ができないことが最大の問題!
遺産分割協議は、相続人全員で、誰がどの財産を相続するか決めないといけない。
【ポイント】亡くなった方の全ての財産を、民法で定められている法定相続分通りで相続する場合には、遺産分割協議を行う必要がないので、協議は必要ない。
しかし、相続分割は簡単なことではない!
亡くなった方の財産が「現金だけ」なら問題になりませんが、不動産は物件により価値はバラバラで、法定相続分通りに分けるなら不動産は共有名義になる。
共有名義になると、将来の子どもたちへの負担になる。
・共有者全員の同意がなければ売却・取り壊しができない
・共有全員の登記費用が必要
・権利関係が複雑になる
【特例が使えない】
法定相続分で分けてしまうと、相続税の特例が使えなくなるので、結果的に相続税が高くなってしまう。
・小規模宅地等の特例
・配偶者の税額軽減
相続人同士の話し合いで決めるので、遺産分割協議書と特例の申請をだすと承認される。
認知症があると成年後見人がいないと遺産分割協議書が作成できないので、特例を申請できないとなる
【認知症を黙っていればいいのでは?】
もし勝手に遺産分割協議書の署名や捺印をすると、罰せられる可能性もあります。
4)認証の相続人がいる場合に検討すべき制度
認知症の人に「成年後見人」を立てる
遺産分割協議ができる
【成年後見人のデメリット】
・家庭裁判所で申し立ての手続きが必要
・後見人が選ばれるまで1カ月半から2か月かかる
・認知症の方がなくなるまでずっと手数料を払う
【将来に備えて家族信託制度を利用する】
※「認知症」対策として活用できる「家族信託」がある
・親と子で信託契約
・この認知契約を託した場合、信託財産は凍結されない
家族信託は、子どもに財産を相続したことにはならない。受託者(子)には管理代金が発生するだけで、相続税の節税対策にはなりません。
まとめ
【認知症になった場合】
もしも親が認知症になってしまえば相続税の節税対策をとることは「一切」実行できません。
参考資料:秋山税理士事務所YouTube